英検®テストにおいて、「時制」は非常に大事なテーマです。リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング全てにおいて、「時制」は正答を導くために重要文法となります。簡単そうに聞こえるかもしれませんが、この文法は英検®1級になっても、非常に大事な文法で、正確な知識は欠かせません。また、簡単に見えて物凄く奥が深く、いくらでも難しい問題は作れます。
というわけで、今回のテーマは「時制」です。
【目次】 1.現在形って、「現在」じゃないの? 1-1.現在形が「今」を表せない理由 1-2.現在形は「不変」なものを表す 1-3.現在形は「習慣」を表す 1-4.現在形は「一般常識」を表す 1-5.練習問題 2.過去形と完了形って何が違う? 2-1.過去形と現在完了形は両方とも過去? 2-2.練習問題 3.まとめ |
現在形って、「現在」じゃないの?
現在形は、現在の状況を表すのかといえば、厳密には違います。なぜそのようなことが起こるのかをこれから説明していきます。
現在形が「今」を表せない理由
例えば、突然外国人に「レストランはどこですか?」と聞かれ、「今私も行くところです」といった返答をするとしましょう。皆さんならどのように答えますか?返答としては下記のどちらが正しいでしょうか?
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答えとしては、2.「I am going to the restaurant, too!」の方が正しいです。但し、とっさに道でこの質問を聞かれたときには、1番のような答えをする方は非常に多いと思います。これは今まで「時制」をしっかり勉強してこなかったことに起因します。では、「現在形」ですが、現在形という名前の「現在」とはまさに「今現在」を表しています。「今現在」という時は、すぐに、0秒で過ぎてしまいます。極端な話、現在形が今現在のことを表すのであれば、「今、私もレストランに行く」という言葉を、0秒以内に話さなければ適切ではありません。ですが、実際問題そんなことは不可能に近いことです。このことにより現在形は、今の瞬間を表すものではないことが分かります。では、どのような場合に現在形が使われるのでしょうか?
現在形は「不変」なものを表す
まず第1に、現在形は「不変なもの」を表すことが出来ます。よく考えてみましょう。現在という時間は0秒で過ぎますが、変わらないものを表現するときは、いついかなるところで話しても、「現在」を表します。例えば「彼は背が高い」と表現したい場合、みなさんご存じのように、「He is tall」という動詞の現在形を使った文になります。 それは、「彼は背が高い」という事実は、恒久的に変わらないことだからです。つまり、いつどの時点・長さで話しても、「彼は背が高い」ので現在形が使用できるのです。
ただし、彼の背が低くなってしまったときには表現が変わります。(彼は背が高かったのに)彼は背が低いと表現する場合は、「He had been tall」となります。ここでは、背が高いというのは不変でなくなってしまい、現在形が使えなくなりました。もはや過去の話になってしまったからです。
現在形は「習慣」を表す
次に、現在形は「習慣」を表すことが出来ます。例えば、歯を磨く、お風呂に入る、テニスのレッスンを受ける、などは定期的にずっと起こることです。この概念は「不変」につながるところもあります。どこの場面で話しても変わらない事実だからです。例えば、「彼は毎日歯を磨いている」という習慣を表現したいときも、「He brushes his teeth every day」というように現在形を使用できます。なぜなら、毎日歯を磨くという「習慣」は、定期的に今後もずっと変わらず続くからです。
現在形は「一般常識」を表す
最後に、現在形は「一般常識」を表すことが出来ます。一般常識も常識なので、普遍的なそして、不変の考えです。例えば、「Winter is cold(冬は寒い)」というのはいつまでたっても変わらない考え方です。つまり、根本的に考えれば、現在形とは「不変」なものを表す時制だということが言えます。
さて、現在形の使い方を理解してきたところで問題を解いてみましょう。TOEIC®の文法問題では、現在形を解答する問題はあまり見かけませんが、選択肢の中に現在形を混ぜて間違いを誘う問題を見かけます。それでは次の問題を見てください。
問題:Mr. Tamada will discuss about the accident that she ______ in front of our office yesterday.
(A)saw
(B)sees
(C)will see
(D)see
この問題は動詞の時制を問う問題です。
ここで分かり易く文を2つに分けると、「Ms. Yamada will discuss about the accident」と「She ______ [the accident] in front of our office yesterday」と分割できます。
このようにすれば簡単ですね。彼女は事故を「yesterday(昨日)」見たので、答えは過去形の(B)sawです。主節に未来形が入っているので、過去のことを表現する従属節には、未来から見て過去に当たる「現在」と考えて、現在形の答えを選んでしまうかもしれません。しかし、上述した通りに現在は0秒しかなく、時制としては不変なものしか表せないということを知っていれば、現在形を選ぶことはなくなります。英検®の問題では、特にリスニングの問題で質問が書いて無く、選択肢だけある問題がほとんどですが、実は時制を見れば書いていない質問も簡単に予測できることがあります。この英検®テストでどのように時制を使うかは、また別の記事でお伝えします。
2.過去形と完了形って何が違う?
現在形の次は「過去形」と「現在完了形」のお話です。特に説明が難しいのは現在完了形です。これはなかなか理解できている方はいないのではないかと思います。なぜなら両方とも過去の話をしているからです。では、どのように違うのか、実際に見ていきましょう。
過去形と現在完了形は両方とも過去?
過去形と現在完了形は先ほどお話しした通り、両方とも過去をあ表す時制です。
過去形:過去のある一点を表す時制 現在完了形:過去の一点にあったことが、現在でも継続して効果を成す時制 |
例えば、「30分前」、「昨日」、「1年前」のなどの過去に、「その時点で」発生した事象を表現するときに過去形を使用します。対して、現在完了形では、発生した事象はいったん完了しますが、発生後の状態が現在も継続している状態を表します。説明だけではわかりにくいと思うので、下記の3つの例を見てください。
【例1】You got a mail.
【例2】You have got a mail.
日本で携帯電話が普及し始めたころ、「You’ve got a mail」というセリフを着信音にすることが流行っていました。その頃、このアナウンスを真似している人をよく目にしましたが、実はほとんどの方が、間違えて表現しておりました。どのように発音されていたかというと、「You got a mail」と発音しており、これは耳で聞くと「You got a mail」に聞こえるため、「have」を抜いて表現していたのです。では、「have」があるとないのとでは、何が違うのでしょうか?
【例1】の表現は、過去のある時点で、メールを受け取ったという表現です。ですから「あなたは(ある時点で)メールを受け取りました」という訳になり、行為自体は完了しているという状態です。一方、【例2】は現在完了形なので、一度どこかで発生した事象が完了し、継続している状態を表します。【例2】の場合ですと、メールを受け取ったがまだ見ておらず、受け取った状態が続いていることを表しています。
練習問題
それでは、今まで見てきた「過去形」と「現在完了形」の違いを踏まえて練習問題を解いていきましょう。
問題1:What the president ______ in the meeting yesterday was quite convincing.
(A)suggests
(B)suggesting
(C)suggested
(D)has suggested
この文の主語は「What the president ______ in the meeting yesterday」と長いですが、主語をAとして置き換えると「A was quite convincing」という非常に単純な文だとわかります。問題1では、主語の中で使われている動詞の時制が問われていますが、「yesterday」という単語があるので、過去形の(C)suggestedが答えになることがわかります。続けて、現在完了形と区別するために、問題2も見てみましょう。
問題2:What the president ______ in the meeting this year is quite convincing.
(A)suggests
(B)suggesting
(C)suggested
(D)has suggested
この問題では、「this year」という表現があるため、「その発言が現在も影響し続けている」ということがわかります。そのため、現在完了形(D)has suggestedが正解であるとわかります。
【訳】
問題1:昨日の株式会社Mentieの取締役会での社長の提案はとても説得力があった。
問題2:今年の株式会社Mentieの取締役会での社長の提案はとても説得力があるものだ。
まとめ
いかがでしょうか? 日本語に訳してみると大差ないのですが、実際の意味には大きな違いが出てきます。英検®テストでは、この違いを利用して様々な良い問題を作ってきます。逆にこの時制をしっかり理解していれば、英検®テストの問題作成者の引っかけが手に取るように見えてくることもあります。時制は馬鹿にせずしっかり学んで、英検®テストに臨みましょう。
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